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暑ぅ…
某県某市人里離れうっそうと茂った樹々の奥
ひっそりとたたずむ日本家屋
「あ〜っつい 死にそ〜〜〜」
着物の裾を膝上20cmに捲り上げ
ギリギリ見えるか見えないかの位に胸元をはだけ
氷嚢を頭に乗せ
ばっさばっさと髪がなびく程に顔に向け団扇を煽ぐ・・・
縁側に日陰を探し移動したかのような水滴が点々
「何ですか? 時子さん大声で・・・うぁっ
な・・・なんて格好してるんですか?」
今し方学校から帰って来たのか汗びっしょりの少年
縁側に座るあられもない格好をした女性に目線を外しながら叫ぶ
「だぁってあっちーんだもん 透君は暑く無いの〜?ん?・・・あ〜れ〜?
透君顔真っ赤だよ?」
わざと胸の谷間を見せ付ける様にしながらにじり寄る
透と呼ばれた少年はやはり目線を外しながら
「暑いですけどっ な、何か羽織ってくださいぃ 目のやり場が」
「え〜・・・暑っいんだってば」
「ふ・・・ふざけないで下さいっ」
時子は視線をずらしため息混じりに小声で
「ふぁ・・・余裕無いのね・・・」
透は時子から視線をずらしながら庭を見ると
地面に両手をつき立てば腰ほども有る淡い浅黄色の髪をたらし
いつもの様に小さきものと会話をしているであろう女性を見る
?
いつもは手なんかついてないよな?
透は庭に出て
「さらさん?どうしたんですか?大丈夫ですか?」
返事が無い・・・
「さらさん?さらさんっ」
「んぅ〜・・・あーとーるさんだー・・・あれ?とーるさんがふたり・・・さん・・・よ・・人?」
さらは炎天下長時間うつむきながら蟻と話をしていた様で
顔を真っ赤によろれいひ・・・
透は辺りを見渡す
「あ」
黒髪でおかっぱの少女が水を張ったタライに
すいかと一緒に浮かんでいる
「あんず ゴメンッ」
と
黒髪の少女の入ったタライを持ち上げ
さらに浴びせた
「とーるぅ 何すんだよっ」
「や、ゴメンって あぁ、さらさんがね・・・」
「さらちゃん? あーーーとーる?」
さらの薄い紫苑色の水のかかった着物が透け・・・
濡れた髪が艶っぽく・・・
「とーるー?」
「ややゃ違くて・・・」
「どしたの? 透くーん?」
「えぇぇっ違っ違っっ」
「何だ?この暑いのに騒がしい」
暑いと云いながらも涼しげにさらりと着流しを着た青年
庭にいる4人を見ながらため息をつく
「かっちゃーんとーるがねー」
「や・・・違うんだじいちゃん これには訳が・・・」
「あぁ・・・わかったわかった、さらを家の中に入れんか・・・今度は煮えるぞ・・・」
あ・・・
さらの周りの水たまりが消え
着物からは湯気が立っていた・・・
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こう暑いとたまらんな・・・
この辺は真夏でも木陰は涼しい筈なんだがな・・・
「ねー・・・かっちゃん、どっか涼しい所無いの?」
「暑いよー桂じい、何とかしてー」
何とかしてと云われても先ほど透があんずと一緒に撒いた水は完全に蒸発して
染みすら残って居ない
「あぁ・・・水浴びも良いかも知れんな・・・」
時子は方眉を寄せ
「はぁ?この暑い中水汲みに行くの?」
「いや・・・その川に水浴びに・・・だ」
さらに眉を寄せ
「正気?いつも水汲みに行く川って小川だよ?そんなに深くないよ?あんな所じゃ・・・」
ふっっと桂は笑みを浮かべ
「その上流だ・・・紫蘇の神社の方に滝が・・・なあの辺りなら・・・」
・
・
・
・
「げ?紫蘇???」
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「は・・・はぁ、しかし・・・いえ、でもそんな・・・
あそこは私の修行の場で・・・はぁ、ですが・・・はい・・・はい・・・
分かりました・・・ですが少し下流の方で御願いします・・・はぃ・・・」
「お姉様?お爺様からですか?」
「他に・・・居るか?この方法で連絡を取る者が・・・」
「あはっ そうですわね」
地面からにょっこりと生えた竹
木隠の屋敷から地中を伝う送話管
常識では測れない世界観
「どうされたのですか?」
「水浴びをしたいそうだ・・・」
「あら、良いじゃないですか・・・涼しそうで」
「あの・・・妖怪共も来るのだぞっ」
「あらあら・・・」
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未完
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