[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
![]()
Cafe de 座敷童子 プロローグ
カランコロンカラン…
「よく来たな~」
「!!?」
「こら、あんず。いらっしゃいませ…だろ。失礼致しましたお客様。」
「おたっ
パコッ
「痛いな、なんだよ、一体」
「あたしはこれでいーのー、かっちゃんが良いって云ったもん。」
「こふん」
「あぁ…申し訳ありません。おタバコはお吸いになられますか?」
「あ、いぇ。吸わないです。」
「吸わない方がいいよーあんなもん。」
「こら、あんずっ。し…失礼しました、こちらへどうぞ。」
ぱたぱたぱた
こつこつこつ
「…なんか、変な店に入っちゃったな。」
ちいさな…小学生位の女の子。
その小さな子に振り回されてる男性。
飲食店なのに走り回るなよな…とか考えていると奥から女性の声が。
「透くーん、お水出したのー?」
「あ、いえこれからです。」
「店長なんだから、しっかりしないと。」
「…店長なのか。大丈夫か?この店。」
「失礼致します。」
「あぁ、っはい。」
奥の方に気をとられていたら、いきなり声を掛けられた。
腰まである淡いすみれ色の髪の女性。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
注文も何も、まだ水も来てなきゃメニューも無いし…
ここはそう云う店なのか?と、目が泳ぐ。
女性は、はたと何かに気づいた様に顔を少し困ったように見る。
「あの…私なんてのは、無しですよ?」
コケそうになった…
なにこの人。
「あ…あの、メニューなんて無いんですかね。」
「めにう…んー。めにうですか。有った…かなぁ?とーるさんに出来るか聞いてみますね。」
え?待って…メニューを飲み物か食べ物だとでも思っているのだろうか?
ぱたぱたと小走りに奥へと引っ込む。
だから、走るなと。
カッカッカッカッカ
少し急いだ足音が近付いてくる。
後から女性がついて来る。
「申し訳ありませんっ、こちら、メニューになります。お決まりになりましたらお呼びください。」
男性は深々とお辞儀をして、本当に申し訳なさそうな顔をする。
「あ、はい。」
小さく答えた。
コッコッコ…
男性は奥に戻るが…
おーい忘れ物が。
そう。隣には先ほどの女性がメニューを興味深げに覗きこんでいる。
「これがめにうですか…。」
ふわり
と、シャンプーのいい香りの髪がこぼれる。
「これはなんですか?」
と指をさしながら聞いてくる。
自分の働く店だろうに、本当に大丈夫なのか?この店は。
一通り説明をさせられた後、数枚の和紙に墨で『お品書き』書かれた紙を渡された。
「えーと…これは?」
「お品書きですっ。見た事…ありませんか?」
いや、有りますけども。
目の前にあるメニューとは別ですか?
「あ、別だ。」
メニューの方には珈琲とか紅茶とか、ホットケーキとかスパゲッティとかハンバーグとか、普通
の喫茶店にある内容が書かれていたが、こちらのお品書きには抹茶とかほうじ茶、玄米茶、昆
布茶、梅昆布茶にお汁粉、団子…な純和風。
「別…ですか?」
「はい?」
「あ、注文とか会計とか…」
「いっしょですよ。」
タカタカタカ
走るな、と。
「ちょっと、さらさん…それは没になったやつでしょう。材料が無いですよ。」
「大丈夫ですよ。私が長年暖めておいた材料があります。」
「長年ってどの位ですか?」
「5ひゃく…んぐ」
店長が女性の口を押さえて奥へ引き摺って行く。
「えーっと、」
「あ、すいませーん。」
・・・・・・・
「すいませーん?」
「あれ?」
聞こえてないのかな?
コココ…
パタパタパタ
ん?
無言かよ。
テーブルの上には水が波波と注がれたコップが。
どうやって溢さず持ってきた?
…点々と滴が床に。
「すいませんお客様。ご注文はお決まりでしょうか。」
「あ、はいシーフードスパゲッティとコーヒー。」
「はい、かしこまりました。お待ちください。」
今度はちゃんと歩いてるな。
「時子さんシーフードスパとコーヒーです。」
「しぃふぅど?」
淡いすみれ色の髪の女性が小麦粉をコネながら見上げる。
「あぁ、さらさん魚介類の事ですよ。海老とか蟹とかあさりとか。」
「えー、透くん、そんなの使わないわよ?」
ざっと沸騰した湯の中にスパゲティ入れガサガサと袋を開ける。
「な…何使う気ですか。」
「サクラエビと鰹節と貝柱と…」
玉ねぎをザクザク切る
「乾物ですか…」
「いつ注文が有るか分からないのに生物なんて置いておけないでしょう。」
油を引いて熱したフライパンに玉ねぎと塩水で戻した貝柱とサクラエビを炒める。
「詐欺…じゃないのかな…」
ゆで上がったスパゲティの水を切りフライパンで軽く炒め、味を調える。
「さら、お皿どこ?」
「はい…。」
小麦粉にまみれた手で皿を渡す。
「ん…」
軽く皿を拭き、盛り付け削り節を乗せる。
「お好み焼きみたいだな…」
コポコポコポ…
ズゾゾゾゾゾゾ…
フシュゥゥゥゥゥ…
「あ、さらさんお願いします。」
「はーい。」
さらがトレーに皿を乗せていると。
「あんずが持ってくー。」
「え?大丈夫か?」
「だいじょうぶ。」
トレーを持ってパタパタ走り出す
「お…ぉい、あんずっ!!」
厨房が騒がしいな。
この店なぁ…。
女の子は可愛かったけど、子供がなぁ…
パタパタパタ…
ツッ…
いや、だから走るなよ。
音のするほうへ顔を向けた。
そこには宙に浮く皿とスパゲティ
仰向けに倒れかける少女
両手を前に出し前かがみの店長
・・・・・・・・
![]() |